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近未来SFコメディ「日本チン没」
第1章  罠
 「やっぱり東京はすげえ」

 東北の片田舎から東北新幹線上野駅に降り立った大谷祥太郎はワクワクしていた。
 憧れの東京は祥太郎の期待通り、いや、それ以上に喧騒と魅力に満ち溢れていた。
 この春高校を卒業した祥太郎は、東京の大学への進学を希望したが、両親は許してくれなかった。
 反発した祥太郎は、家出も同然に東京行きの新幹線に飛び乗ったのだ。
 祥太郎の背には背負い慣れたリュックが一つ。
 リュックの中には着替えが入っているだけで、電子マネーのチャージ金額も覚束ない。
 ワクワクする気持とは裏腹に、不安げな足取りで、きょろきょろとあたりを見回しながら、祥太郎はホームを歩き出した。
 街には燦々と初夏の日差しが降り注いでいたが、日に焼けた女はいない。目の前を歩く女性のハーフパンツからスッと伸びた足は、真っ白で透き通るようだ。
 東京はなぜか季節感のない街だと思った。
 すると、突然、そのハーフパンツの女性が振り返って祥太郎に声を掛けた。 

 「東京ははじめてなの?」
 「はい」

 祥太郎が田舎かっぺ丸出しの声で返事をすると、その女性は「フフフ」と笑った。

 「これから、どちらに?」
 「僕、アキバに行きたいんですけど」 
 「アラ、私も同じよ」
 「エッ、本当ですか」

 祥太郎の顔がパッと明るくなった。
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