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海猫たちの小夜曲
第5章 時間よ、止まれ ~海色のグラスと小麦色の少女④~
 前に告白した時もそうだったけど、先生がそういう目であたしを見ていた、というのは、あたしにとって、間違いなく悦びだった。
 
 遥のことは大好きだけど、それだけに、あたしは遥みたいに垢抜けてない、あたしは、遥みたいに肌も白くないし、海に行きすぎてるせいで髪も痛んでて……などなど、あたしのなかで遥に対する劣等感はすごくある。

 ましてや、あたしは叔父や秀隆にいいように体を弄ばれて、汚されてきたわけで、そのことに対する罪悪感はずっと付きまとっているのだ。
 そのことを思うと、どうせあたしなんか、といつも卑屈になってしまう。
 
 だけど、そんなあたしを、先生は抱きたいと言ってくれた。
 わたしはもう、それだけで涙がでるほどに嬉しかったのだ。

「……僕は、心底、情けない男だな。本来だったら、怒鳴りつけてでも、君たちの誘いをはねつけなくちゃいけないのに。……もう、僕は、君たちの誘いに抗うことができないよ。それどころか、もっと、もっと、君たちに溺れて、自分の歪んだ欲望を満たしたくて仕方ない。多分、ぼくはあのファウストのように、どこまでも堕ちていくんだ。」
 そういうと、先生は逞しい腕で、あたしと遥を両脇に抱き寄せた。
 
 そして、あたしは自分の体を先生にすり寄せるようにして、先生を求めた。

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