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海猫たちの小夜曲
第2章 絶望の始まり ~海色のグラスと小麦色の少女①~
 陽が落ちて、暗くなりかけたころに一通りの掃除が終わり、男子が仕上げにホースで水を撒きはじめた。
 去年もそうだけど、大体、こうなるとプールのなかに残っている連中で、水のかけ合いが始まる。今日は、水着ではなく体操服だが、そんなことはお構いなしだ。

 女子部員たちは水のかけ合いが始まることを見越して、大体がプールの外に出ているが、高瀬さんはそんなこととは知らずにプールの中にいた。

 普通は、女子部員には遠慮する、という暗黙の配慮のようなものがありそうなものだが、不幸なことに、今年、水まきをしている男の子はそういう配慮のできる人間ではなかった。
 男子部員たちが、水をかけあって盛り上がるなか、その水まきの男の子は歓声をあげて、高瀬さんにも同じように水を浴びせた。
 
 頭から水を浴びた高瀬さんは、水まきの男の子を恐ろしい形相で睨みつけると、そのまま男の子に歩みより、頬に思い切り平手打ちを食らわせた。
 
 そして、水泳部の全員が、高瀬さんの見事な平手打ちにあっけにとられて呆然としているなかで、今年のプール掃除が終了したのだった。

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