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第17章 英虞湾へ

　知り合いのハッカーのおかげで、今井久子の住む家はわかっていた。久人が話してくれたように、英虞湾沿いの高台にある。
　英虞湾というのはシンプルなお椀のような形ではなく、ひび割れのような入り江がいくつもある複雑な地形で、リアス式海岸と呼ばれる。したがって湾に沿って走る道路も地図で見るよりずっと長い。

　その複雑な地形をなぞるように、道路が走っているが、入りくんだ先からは高台に続く山道もある。
　東川の車はその山道に入り、高台に上がっていった。道は次第に細くなり、無くなった先に一軒の別荘のような造りの家があった。

　車がやってくるのが見えたのだろう、住人と思われる女性が玄関先に立っていた。
　車には運転席の東川真子だけがいた。昨日のセックスで二人がまた一人になってしまっていたのだ。

　今井久子と思われる女は、車を降りたのが女一人だとわかって安心したのか、ゆっくり近づいてくる。

「道に迷った？それともお客様かしら」

「今井さん？」

「・・・」