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🍑桃と奥様❤
第1章 🍑桃と奥様💖
「すごぉぉおい!桃、桃、ももー!!」
柊屋敷が都の姫を嫁御として迎えて、初めての夏が来ました。
園主サクナと妻のスグリは、果物園の視察……という名目で、単なるピクニックに来ております。
スグリが果樹園でしたいこと、というリストには、ずいぶん前から「ピクニック」が入っておりました。「一番良い季節に」とサクナがしてくれた約束が、ようやく果たされる時季が来たのです。
「サクナ、桃!桃いっぱい!!」
「ああ、一杯だな」
たわわに実った桃の実を見てはしゃぐ妻の姿に、園主は普段の不機嫌顔をどこかに落っことして来た様な、穏やかな笑みを浮かべました。
「……結婚式の桃のお花も、きれいだったわよねえ!桃と、林檎と、薔薇と……」
「そうだな。綺麗だったな」
式の時の飾り花を指折り数えて思い出しているスグリを見て、どんな花よりも花嫁が一番綺麗だったし今でも綺麗だ、と口に出さずにサクナは思いました。
「あんなに綺麗なのに美味しい実もなるなんて、桃って、すごいわねっ!?」
「……ああ。綺麗で美味いってなぁ、最高だよなあ」
綺麗で美味しい最高の妻の髪を一房摘まんで、サクナはそこに口づけました。
「ね、どこに座るの?」
「今なら、あの辺かな……夏の初めから秋口まで順に熟す様に、畑ごとに品種が変えて植えてある」
「へえ!!だから少しずつ桃の見た目が違うのねえ!」
「お前は、柔らかい桃と固い桃と、どっちが好きだ?」
「そういうのも有るの?!熟すとどれも柔らかくなるんじゃないの?!」
「全部が柔らかくなる訳じゃねえ。熟しても、固いまんまの桃も有る……食ってみるか?待ってろ」
サクナは桃の木を見回して、一つの実を取りました。そして、少し離れた所の桃も、一つ手に取りました。