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はなむぐり
第4章 誘う香り



逃げられるのか、一生。

自分のこの危ない気持ちから。蜜樹から。

「蜜樹」

「いや…聞きたくないっ…」

蜜樹は両手で耳を塞ぎ、匍匐前進のように身体を引きずりながら逃げようとする。
その上から覆い被さり、強引に仰向けにさせた。

「蜜樹…」

「やっ…見ないで」

折れそうな細い両手首を掴んで顔の横で抑え、片膝を両脚の間に滑り込ませた。
私のひとつひとつの行動に目を丸くさせ、胸を上下させる。

「蜜樹」

「ん…」

拳が少しずつ開かれ、強張る身体から一生懸命力を抜こうとしているのが分かる。

兄さん、やっぱり好きだ。

私を許さないと思うだろう。

謝っても許されないが、そのかわり私を早めに連れて行ってほしい。

蜜樹に好きな人ができたなら、私は身を引く。

しかし、思いが同じである限り、私は蜜樹を離さない。

今はすべての思いを吐き出しはしない。

兄の面影を感じる美しい顔立ちに目を細めたくなる。

この一瞬の感触で何度も頭の中で抱き潰した。

深く、少しのつなぎ目を許さないほど口づけた。
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