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お局の坪井さん
第3章 三
―――二時間後。
社内がザワついている。専務も、花井さんも、社内にいる人間全員が、彼、澤村健斗を見ている。
そりゃそうだろう。スーツ姿で、大きな花束を持って……くそ目立つ!!
「澤村く〜ん!久しぶりだね〜!花束なんか持って、どうしたの〜?」
専務がデスクからオフィスの入口に立つ澤村さんに声を掛けると、
「こんにちは。お久しぶりです!今日近くで打ち合わせがあったんで、皆さんの顔が見たいなーと思って!あ、これ!新商品発売のお祝いです!」
澤村さんは爽やかな笑顔で、丁寧にお辞儀をした。そんな澤村さんに、専務がニコリと笑いかける。
「そっかそっか!ありがとう。坪井さん、折角だからお花、花瓶に移してて」
って、私?!仕方ない……。
椅子から立つと、澤村さんの方へ近付いていき、頭を下げる。
「ありがとうございます……」
澤村さんの顔、見れない……。旅館の事を思い出して……。花束を受け取る手が震える……。