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お局の坪井さん
第2章 二
「いやぁ、今夏の新商品のボールペン、人気ですよ〜!流石ですねぇ!」
「あれは、ハサミとボールペンが一緒に使えたら良いなぁと提案したまでで……」
「ウチの店でも一番売れてますよ〜!坪井さん、ありがとうございます」
澤村さんの部屋へ入ると、テーブルを挟んで、二人とも缶ビールを飲み始めた。普段、仕事で会う時と変わらない。座椅子に正座しながら、礼儀正しく私は頭を下げる。
「こちらこそ、いつもウチの商品を販売して頂きありがとうございます」
「堅いっすよ〜!そんなかしこまらないでください。今日は仕事で泊まりでも、こうして二人で飲むのは始めてなんですから〜」
「いえ、これも出張という仕事なので」
眼鏡を中指でクイッと上げる。
「何を言ってるんすか。……それにしても、坪井さんの浴衣姿、色っぽいですね〜」
「澤村さんも、もう顔が真っ赤ですよ」
「え〜!んなわけないでしょ!まだ缶ビール一本飲んだだけですよ!」
お酒弱いのか、ヘラヘラと笑う澤村さんを、ビールを飲みながらじっと観察していると、澤村さんが手を滑らせビールを零し、浴衣を濡らしてしまった。本人は気付いていない様だけど。
「あの……澤村さん、ビール零しましたよ?」
「え〜、零してないっすよ〜」
「いや、あの……」
とんだ間抜けだわ、この人!どれだけお酒弱いの!
「あれ〜本当だ。坪井さん、拭いて〜」
しかも子供みたい!
やっと自分の浴衣が濡れている事に気付いて澤村さんが言うと、私はおしぼりを手に持ち、澤村さんの隣に移動し、正座した。
「じっとしててください」
「はぁ〜い」
何でこんな目に……。