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ハンカチの君
第8章 大学生活
大学の講義を受けている時間は、圭子にとって幸せだった。

本当は大学で学ぶことなど出来ないと思っていたので、勉強できる機会が増えたことが嬉しかった。
授業を受ける時はいつも最前列に座った。

ノートを見せてくれるような友人もいないので、極力休まないように、講義の内容をノートに書き込んだ。
授業が終わると分からなかったところがあれば、すぐに教授に聞きに行っていたので、教授からの評価はいつもよかった。

お昼は基本は一人で空き教室で作ってきたお弁当を食べた。
ヘルスで働き始めてから給料が良かったので、贅沢にもお弁当に肉や魚を入れるようになって、お弁当を開ける瞬間の気分が上がった。

空き教室はほとんど仲良しグループで固まって食事をしていて、一人でいる圭子は異質であった。
気を使って会話をするよりも、一人で食べる昼食は気楽だった。

しかし、週に一回は悠馬の所属するフットサルサークルの先輩達と食堂でご飯を食べなければならなかった。

その日は朝早く起きて、悠馬の分のお弁当を作った。
悠馬の分のお弁当を作るのは、手間ではなかった。
お弁当代としてお金も渡してくれるので、作ることに関しての不満はなかった。


ただ、悠馬の嫌いなものを入れると後で激怒されるし、彩りを鮮やかにしないとお仕置きをされた。
野菜嫌いな悠馬のお弁当を作るのは、圭子の頭を悩ませた。

お昼になると食堂にお弁当を持って行った。

悠馬達はいつも同じ食堂の席を数人で座っていたので、すぐに見つけられた。

悠馬の隣の席は圭子のために空けられていたので、そこに座ってお弁当を渡す。
「おせーよ。」
悠馬は不貞腐れた声を出した。
周りに人がいる分柔らかい声だったが、圭子には悠馬がかなり怒っていることがわかった。
圭子は悠馬を刺激しないように、申し訳ない気持ちを告げた。

「ごめんなさい。授業が思ったより長引いてしまって、遅くなってしまったの。」

圭子はお弁当を渡しながら、悠馬の瞳を見つめた。
圭子は、悠馬がこのサークルのメンバーに圭子を自慢するために自分を彼女にしたのだと思い始めていた。

だから、ここで粗相をするとセフレにされてしまうと思い、この時間は必死に悠馬の理想の彼女を演じた。
彼女ですらあんなに酷い扱いなのに、悠馬のセフレなど怖くて絶対になりたくなかった。

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