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ハンカチの君
第13章 料亭
「間宮様、お連れの方をご案内しました。」
「あぁ。」
清一郎が返事をすると、女性は清一郎の視界に入らないように扉を開けた。

圭子はそこに知っている清一郎がいたことにホッとした。

「何をしているんだい?入ってきなさい。」
圭子は清一郎に言われた通りに、靴を脱いで中に入ると扉がゆっくりと音もなくしまった。

部屋の中は座敷になっていた。
4人掛けの椅子に高級感のある机が置いてあり、圭子は清一郎が座っている席の向かいに座った。

「飲み物は何にする?ご飯はコース料理を頼んであるけど、苦手なものはなかったかな?」

メニュー表は特になかったが、圭子はどこにでもありそうなものを無難に答えた。
「温かいお茶がいいです。苦手なものはありません。」
「分かった。温かいお茶とコーラを頼む。」
「かしこまりました。」
清一郎が飲み物を頼むと、扉の向こうから先ほど案内してくれた女性の声がした。

すぐに飲み物と料理が運ばれてきて、机の上に置かれた。

圭子は人生で食べたこともないような高級な料理が並ぶ机を見て、思わず唾を飲んだ。

「さぁ、まずは食べて。」
「い、いただきます。」
圭子はまず初めに手前に置いてあった刺身を箸でつまんで口に入れた。

何の魚の刺身なのかわからなかったが、口の中に入れると舌の上でとろけて無くなった。

「美味しい!!!」
「グハハ〜!それはよかった。もっと食べるといい。」
清一郎の大きな口から、黄色い歯が見えた。
小さな目は笑うとさらになくなった。
鼻息は荒く、笑い方は気持ちが悪かったが、圭子は不快には思わなかった。

圭子は自分の服装がこの料亭にそぐわなかったことを恥ずかしく思っていたが、清一郎もいつもと同じようによれよれの茶色い柄物のTシャツにグレーのパツパツのズボンを着ていた。

ここで清一郎がスーツなど着ていたら、圭子は萎縮してしまったが、いつもと変わらない清一郎に安心した。

安心したらお腹が空いてきたので、目の前に置かれた見た目も味も美しい料理をどんどん口に入れた。
どの料理も美味しくて夢中になって食べた。

清一郎を見ると、ほとんど食べていなかった。
ガッツキすぎていただろうかと思い急に不安になった。
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