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もしも勇者がラスボスと子作りをしてしまったら。
第1章 いきなりラストシーンです。
「……」

私は結んでいた口元をふっと緩めると、しがみつくように勇者の身体に回していた両腕と両足をそっと離した。

絶頂の快感を迎え、己の本心にも気づいたおかげか、死を前にしても、心はとても穏やかった。

むしろ、今まで生きてきた中で一番幸せを感じている自分がいる。

こうして人肌に触れることができ、永遠に満たすことができないと思っていた孤独を癒すことができて。


どうせ死ぬのであれば、最後くらい……


勇者の温もりを、己の心と恥部で感じながら、私はゆっくりと両腕をあげる。

そして、今まで散々人の命を殺めてきた指先をそっと伸ばすと、目の前の男の頬に優しく触れた。


礼を言う。勇者よ……


私は心の中でそう呟くと、残された力で頭を持ち上げ、静かに唇を重ねた。

柔らかく、温かい感触。

それはまるで、自分の今までの行い全てを優しく受け入れてくれるような気がした。

いずれ死ぬときは憎しみと憎悪の中で悶え死ぬのかと思っていたが、どうやら違っていたらしい。

これほどまでの気持ち良さと、胸の奥に広がる温もりに包まれて死ねると言うのであれば、まあ悪くはない……

勇者も、そんな私と自らの死を受け入れたのか、優しく何度も唇を重ね始めた。

瞼を閉じ、自分もそれに応じる。

耳に聞こえてくるのは、地響きのような瓦礫が崩れて落ちていく音。

どうやら、ついに『死』がそこまで迫ってきているようだ。
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