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もしも勇者がラスボスと子作りをしてしまったら。
第1章 いきなりラストシーンです。
「君を殺したくない」
「⁉︎」
耳を疑った。
勇者が、この世界から自由を取り戻すための期待を背負っているはずの勇者が、私を殺したくないだと?
同族からも忌み嫌われ、何度も殺されかけた私が、まさか宿敵であるはずの相手からそんな言葉を聞くなんて夢にも思っていなかった。
一向に収まらない心の動揺が、まるで台風のように渦を巻く。
「な、な、何をバカなことを言っている! 私は……私はお前の宿敵だぞ!」
緊張のせいか、射抜くように早口で言葉を告げる。
だが相手は、もうそのつもりのようで、足元に落ちていたボロボロになった衣服を手に取ると腰にだけ巻き付けて、立ち去ろうとする。
私はその背中に向かってもう一度大きく叫んだ。
「ま、待て! お前のせいで、私はもう居場所を失った……。帰る場所もなければ、下僕たちもいない。どの道生きてはいけない!」
生きてはいけない。
自らの敗北を認めるようなその言葉が、鋭いナイフとなって胸に突き刺さる。
そう。
私にはもう居場所なんてない。
ドラゴン族の掟、負けた者には残酷な死を。
同族との戦いに負けた者に課せられる刑罰がこれなのだから、まして人間ごときに負けたとなれば、肉体のみならず未来永劫、魂まで苦しみ続ける刑罰を課せられるはずだろう。
いや、もともと自分には居場所などないか……
ふと、そんな言葉が頭よぎり、私は自嘲じみた笑みを浮かべる。
強すぎるがゆえ、差別され続けてきた自分には、家族もいなければ、自分の存在を快く受け入れてくれる相手もいない。
だからこそ、どうせ負けたのであれば、戦った相手の手で殺されたい。
一瞬とはいえ、生まれてこのかた感じたことのない気持ち良さと、そして、温もりを与えてくれた相手に。
「⁉︎」
耳を疑った。
勇者が、この世界から自由を取り戻すための期待を背負っているはずの勇者が、私を殺したくないだと?
同族からも忌み嫌われ、何度も殺されかけた私が、まさか宿敵であるはずの相手からそんな言葉を聞くなんて夢にも思っていなかった。
一向に収まらない心の動揺が、まるで台風のように渦を巻く。
「な、な、何をバカなことを言っている! 私は……私はお前の宿敵だぞ!」
緊張のせいか、射抜くように早口で言葉を告げる。
だが相手は、もうそのつもりのようで、足元に落ちていたボロボロになった衣服を手に取ると腰にだけ巻き付けて、立ち去ろうとする。
私はその背中に向かってもう一度大きく叫んだ。
「ま、待て! お前のせいで、私はもう居場所を失った……。帰る場所もなければ、下僕たちもいない。どの道生きてはいけない!」
生きてはいけない。
自らの敗北を認めるようなその言葉が、鋭いナイフとなって胸に突き刺さる。
そう。
私にはもう居場所なんてない。
ドラゴン族の掟、負けた者には残酷な死を。
同族との戦いに負けた者に課せられる刑罰がこれなのだから、まして人間ごときに負けたとなれば、肉体のみならず未来永劫、魂まで苦しみ続ける刑罰を課せられるはずだろう。
いや、もともと自分には居場所などないか……
ふと、そんな言葉が頭よぎり、私は自嘲じみた笑みを浮かべる。
強すぎるがゆえ、差別され続けてきた自分には、家族もいなければ、自分の存在を快く受け入れてくれる相手もいない。
だからこそ、どうせ負けたのであれば、戦った相手の手で殺されたい。
一瞬とはいえ、生まれてこのかた感じたことのない気持ち良さと、そして、温もりを与えてくれた相手に。