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飼い殺しの犬
第1章 飼い殺しの犬

運良く、スーパーよりも先に小さな酒屋を見つけた。
店主に怪しまれないよう500mlの缶ビール12本を買い、泡立たないよう注意しながら急いで戻った。



玄関を開け、直ぐに胸騒ぎを覚えた。
しん……と静まり返っている。

あの女性二人を、輪姦しているのか……
それにしては静かだ。

……ダメだ、悪い方にしか考えられない。


「戻りました!」

玄関を上がり、襖を開ける。

そこには、絶望しきった顔の渡瀬先輩がテーブル前に腰を下ろしていた。

「………ああ、柚木か。お前も手伝え」

視線を何処に向けているのか解らない。
いつもの威勢のいい声の張りもない。

「はい……」

徐に立ち上がった先輩の後に続き、廊下を出て進み、奥の部屋へと入る。

中は暗かった。
木下先輩と幹部候補の二人が、何やら大きなものを布で包んでいる。

「俺と柚木で行ってくる」

低いトーンでそう言った渡瀬先輩の言葉に、三人はビクッと体を震わせた。

「……ゆず、き」
「お前ら、しっかりしろ!」

それまでの渡瀬先輩が嘘のように、いつもの威勢の良い声を張り上げる。

「行くぞ」
「はい」


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