この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
飼い殺しの犬
第1章 飼い殺しの犬
見た事もない車。
そのトランクに、大きな荷物を二つ載せる。
……もしかして、これは……
考えたくない。
だけど、考えずにはいられない。
助手席に乗り、先輩の運転で夜道を走る。
先輩、飲酒運転ですよ。
そんな事、口が裂けても言えない雰囲気。
妙にギラギラとして、妙に落ち着いた渡瀬先輩が……怖い。怖くて堪らない。
車は山道へと入り、真っ暗な林道を走る。
不気味な程に生い茂る草木。
闇、闇、闇──
「柚木」
突然、先輩が口を開いた。
「はい」
「もう、勘づいてんだろ?」
何て答えればいい。
躊躇すれば、先輩が少しだけ余裕のある溜め息をついた。
「お前が出てった後、連れ込んだ女が帰るって言い出して……」
「………」
「ちょっとな。揉めたんだよ。
……木下のヤツ、あの女に騙されて玄関先まで逃しやがって。
まぁ候補の奴らに捕まえさせたんだけどな」
つまり、女性と木下先輩の三人になる場面があった……って事か。
「そん時知らねえ男が一人乗り込んできて……そっからひと悶着あってよ。
……ああ、クソ」
ドンッ
ハンドルを叩く。
「………ソイツを縛って、目の前で女をレイプして。最後にソイツのおっ立ったちんこを女に突っ込んで、イかせて……口止めさせようとしたんだよ」
先輩の気が、荒々しくなる。
ハンドルを切り、突然の急ブレーキ。
「着いたぞ」