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飼い殺しの犬
第1章 飼い殺しの犬


見た事もない車。
そのトランクに、大きな荷物を二つ載せる。

……もしかして、これは……

考えたくない。
だけど、考えずにはいられない。

助手席に乗り、先輩の運転で夜道を走る。

先輩、飲酒運転ですよ。
そんな事、口が裂けても言えない雰囲気。
妙にギラギラとして、妙に落ち着いた渡瀬先輩が……怖い。怖くて堪らない。

車は山道へと入り、真っ暗な林道を走る。

不気味な程に生い茂る草木。
闇、闇、闇──


「柚木」

突然、先輩が口を開いた。

「はい」
「もう、勘づいてんだろ?」

何て答えればいい。
躊躇すれば、先輩が少しだけ余裕のある溜め息をついた。

「お前が出てった後、連れ込んだ女が帰るって言い出して……」
「………」
「ちょっとな。揉めたんだよ。
……木下のヤツ、あの女に騙されて玄関先まで逃しやがって。
まぁ候補の奴らに捕まえさせたんだけどな」

つまり、女性と木下先輩の三人になる場面があった……って事か。

「そん時知らねえ男が一人乗り込んできて……そっからひと悶着あってよ。
……ああ、クソ」

ドンッ

ハンドルを叩く。

「………ソイツを縛って、目の前で女をレイプして。最後にソイツのおっ立ったちんこを女に突っ込んで、イかせて……口止めさせようとしたんだよ」


先輩の気が、荒々しくなる。
ハンドルを切り、突然の急ブレーキ。


「着いたぞ」

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