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飼い殺しの犬
第1章 飼い殺しの犬
新月なのだろうか。
深くて暗い静寂な闇。
時折頬を撫でる生温かい風。
車のトランクを開け、布に包まれた荷物を肩に担ぐ。
……やっぱり。
感覚からして、人間だ。
しかも……女性。
「おい、お前らっ」
闇を切り裂く様に光を放つ、懐中電灯。
映し出されたのは、幹部候補の二人。
大きなシャベルで地面を掘っていた。
「できたか?」
「はい」
よし、と先輩が肩から下ろす。
「柚木」
先輩が僕を呼べば、候補生がビクッと体を震わせた。
「お前も下ろせ」
「はい」
先輩がしゃがみ込み、布をぺらりと捲る。
「……こいつさ、予想以上に強くて」
そこから現れたのは、見知らぬ男の顔。例の男だと直感した。
「居残りの三人はボッコボコにやられるし、コイツらはビビッちまって加勢出来ねぇし。
その間に女は逃げるし。
……散々すぎて、ムカついてよ。
で。ついやっちまった。
包丁で」
ゾクッ……
蒸し暑い筈なのに、背筋が凍る。
「………」
布に包まれた男を見下ろす。
ずっと……布に包まれたのは、あの女性二人だと思っていた。
何かのハプニングで、死なせてしまったんだと。
だけど、さっき……
もし聞きまちがいじゃなければ、二人は逃げたって……
……じゃあ、僕が運んだのは……
ドクンッ