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飼い殺しの犬
第1章 飼い殺しの犬

震える手で、布を剥ぐ。
上手く、指が動いてくれない。


……まさか


「………ゆず、き……?」


そこにあったのは
眠った様な顔の、柚希──


なんで。
何でだよ。

……何で柚希が殺されなくちゃ、ならないんだよ……!



包丁。

そうか。
止めようとした柚希を、先輩が……



「俺は殺してねぇよ」


見上げた僕に、先輩が冷静な声で否定した。




女が帰ると騒ぐ前。
つまり僕が合宿所を出て直ぐ──
キングが、降臨した。


『良く見ると、ブスだな』
キングは女性二人を足蹴にし、美味そうなのはこっちだと言わんばかりに、残った唐揚げをひとつ摘まんで口にした。



「……キングの登場で、ピンときたんだろうな。迂闊だった」



その唐揚げが、予想以上に美味かったのだろうか。
台所を向いたキングの目に映ったのは、柚希だった。

無言で柚希の手を引き、廊下へと消える。



「……まぁ、やる事といったら、アレしかねぇだろ。

その間に俺らは、ひと悶着あって……
で、俺が刺しちまった後、木下達に凶器握らせて、瀕死状態のコイツを刺させたんだよ。

やらなきゃレイプ映像ネットに流すって言ったら、みんな素直でさ」


頭を突き刺す様な、細くて高い不穏な音が脳の奥で聞こえる。
……耳鳴り、だろうか。


「で、掘る元気がありそうなコイツらをここに連れて来て。
戻って来た所で、丁度キングが部屋から出てきて。
『クスリ打ったから、大人しいうちにヤッていいぜ』ってよ」


柚希を払い下げた……って事か。


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