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第78章 夏の鰻

鰻屋の中庭を眺めては、瞑想するように、これまでの苦悩を忘却しようとした。

嫌な後味なんて止みはしない……

南風は青紅葉の庭木と戯れる。

それなりに溜め息をしている間に、重箱と吸物椀、漬物皿が盆に載って出てくる。なんの変哲もない。

膳立てされた夏の鰻、ひと口目でそれは脂が逃げたスカスカの味だと分かった。

何だか今の自分のようだと思いつつ、○雄は咀嚼する。