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アーティストなS彼
第2章 故郷
自転車を手押ししながら坂を登る。もう少しで家だ。
坂を登りきり、下り坂を一気に下っていく。髪もロングスカートも風に揺れた。
『斎藤 愛美』(さいとう まなみ)この街の高校を卒業後はフリーターの実家住まいだ。
今日も午前のバイトを終え帰宅する。


家に帰って自室のベッドに座りながら昼食のサンドイッチと紙パックの紅茶を飲む。
一息ついて、窓の風景を見る。青い空。庭の桜の葉っぱが風に吹かれ揺れている。
(勇気君…何しているのだろう?)
愛美は高校時代の数々の彼女で一番最後で一番長く付き合っていた。



愛美が思い出に浸る。メガネの奥の瞳は過去を写している。
…勇気君と初めて話をしたのは高校三年生の秋だったね。


…とりあえず的に日本史のレポートを作成する為にコンビを組まされた勇気と愛美。
多くの女子が注目している勇気と私なんか似合わないと、思い今までわざと距離を置いていた愛美。
予想外の事に戸惑う。
が!しかし…
勇気の方から愛美に口を開いた。
「よろしくな。日本史だから昭和29年がいいと思うが…愛美はどう思う?」
(昭和29年ってなにかあったっけ?)と首を傾げたが、
「勇気君がそう言うならいいよ…」
と笑って答えた。
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