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社長息子は受付嬢を愛慕う(仮)
第12章 聖と巽

全て取られてしまった時、私は耐えきれなくて、巽さんから目線を反らし横を向いてしまう。……見られたくないよ。

「こんな……。嫌な思いをしたな奏多」
「少し薄くなったか……巽さん!?」
「……心配した」
「……ぁ……」

言葉が出なくなった理由、それは巽さんが私を抱き締めたから。嘘でしょう、こんな私を抱き締めてくれるなんて、心配なんてことを言ってくれるなんて。熱い巽さんの温もりと共に、夢を見ているみたい。

「聖から連絡が来た時、すぐにでも飛んで来たいと思った」
「巽さん、私は……」
「奏多が悪いわけじゃない、それは聖から聞いている。だけどな、心配なものは心配なんだ」
「ごめん……なさい……」
「だからなぜ謝る? 悪いのは、こんな痣を付けた奴だろう。悪くないのに謝らなくていい」
「でも……」

私が三科さんを甘くみたせい、それは分かってるの。
あの誘いに乗らなければ、こんなことにはならなかったって反省してる。そう、誰のせいでもない、私が油断したために起こった出来事なのよ。

「私が頷いて、誘いに乗ったのが悪いって理解してる。それに三科さんが追い打ちをかけたことも。
三科さんにとれば、受付に居ればどちらでも同じ、私じゃなくてもよかったことが分かって、お金を置いて帰るつもりだった」
「……あぁ」
「でも追いかけられて、路地裏に連れて行かれ、『男は好きでなくとも、憧れだけでも女を抱ける』と言われて腹が立ったの」
「……あぁ」
「気持ち悪くて嫌で嫌で逃げたくて、僅な隙を見つけて三科さんを蹴り上げて逃げ出した」
「あぁ……」

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