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社長息子は受付嬢を愛慕う(仮)
第12章 聖と巽
縁側に座り、時間を気にすることなく見つめながら、最近の私と周りのことを考えるって、凄く贅沢な気がする。
普段は起きて、出社して、仕事をこなして、帰宅して寝るだけの生活だよ? ただでさえ縁側に座ること自体、私には初体験。祖父の家にすら縁側なんてなかったもの。
「……??」
また縁側の向こうから足音がする。日に何度もこうしてお茶やお菓子を持って来てくれる。だから今回もそう思った。……実際は違ったけど。
「……奏多」
「……あ……」
私の前に現れたのは……巽さん。来るとは聞かされていたよ、でも本当に来るなんて思ってもいなかった私。……どうしよう、なんて話せばいいの? 言葉を交わしたのが、あのホテルの中だけだったので、なにを話していいのか分からない。
「寒く……ないか?」
「え!?
……いえ、そんなに寒くはありません」
「体が冷えている」
私の腕を掴んだ巽さんは、そう言って私を部屋の中へと促す。特に逆らう理由も無いので、巽さんに連れられて部屋には入ったけれど、視線が凄く痛い。……見ているのが胸元だもの。
「その……。首に巻いてあるのを外していいか?」
「……それは」
「変なことはしない、約束する」
「……はい……」
一瞬首に巻いていた布を握り締めた私。でも巽さんの『約束』という言葉で、握っていた手を離す気にはなったよ。……巽さんの手が、ゆっくりと布に触れ、少しずつ布が解かれてゆく。