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社長息子は受付嬢を愛慕う(仮)
第13章 付き合ってみる?
どれくらいの間、俺は奏多を抱き締めていただろうか? 気弱に俺にしがみつく奏多は……耐えていたんだろう、話したことで手が震え泣いているとすら思えてくる。もう一つ感じたのが戸惑いの瞳。俺や聖を『偉い人』などと言うとなれば、気楽に奏多を遊んでいると思われたのかも知れん。……そんなわけがない、俺は奏多しか好きになった経験がないと、何度も言っても、今は信じて貰えないんだろう。
そんな悲痛な静寂を破ったのは、仕事が一段落しただろう聖の存在だ。
「……お邪魔だったかな?」
「っ!? い、いえっ!」
「これを見て言うか聖?」
動揺した奏多は俺から速攻離れて後退りしているし、俺は俺でこの中途半端な状態をどうすりゃいいのか分からず、半ばヤケクソ混じりにその場で胡座をかいた。
……それを見て笑う聖。間違いなく確信犯だなコイツ。
「……で、仕事は終わったのか?」
「小休憩という感じかな? 根を詰めてもいい案なんて浮かばないからね、社の役員も含めて休憩中」
「相変わらず手玉に取る」
「危機回避は基本中の基本、巽も教わっているはずだよね」
「あぁ、そんなもんもあったな」
このやり取りを見て聞いて、奏多は思いっきりドン引き。そりゃされるな、噛み合わないようで噛み合う兄弟会話なんだ。俺たちはこれが普通なんだが……。
この間の悪い雰囲気も、気を使った手伝いがお茶を持って来たことで、なんとか和らいだ。
俺と聖が向い合わせに座り、その向こうで奏多がお茶をしている変な構図。まぁ、どちらに付くか分からん奏多には、当たり前のポジション取りか。