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社長息子は受付嬢を愛慕う(仮)
第5章 もう一人の社長息子

どこの店も大概は同じだけど、御手洗いから大広間まで出る近辺は道幅が狭いことが多い。
軽くふらつく体を無理に伸ばし、また戻りたくないなんて思いながら歩いていれば……。

『……ドンッ!』

「きゃっ!」
「……!?」

不味い! 人にぶつかった!!

「す、すみません!」
「……いや。大丈夫か?」

男性のようだけど、綺麗な声だなと顔を上げて見れば。

「……あっ!」

うそっ! 聖様!?
……じゃない、似ているけれど微妙に違う。この人は誰?
店のお客様だろうけど、あまりにも聖様に似すぎていて、私はパニクッているのかな?

「……俺の顔に、なにかついてるか?」
「いえ! 本当にすみません。……少し酔いすぎていたみたいです」

深々と謝り、この場を立ち去ろうとしたが、一歩歩いた途端、ガクッと体の力が抜けてしまう。
……どうしよう、どうしよう! 私、凄く失礼なことをしてる。

「おいっ!」
「私……あれ……」

混乱すれば混乱するほど動かない体。庇って支えて貰っているから、かろうじて立ってはいるけれど、自分で歩いて戻るのは無理に近い。
こんな急に酔いが回るなんて。それも知らない人に迷惑をかけて。

「はぁ、仕方ないな」
「……え?」

私を支えてくれている人は、飲み会をやっている大広間とは別方向に歩いて行く。
必然的に私も同じ方向に行くわけなんだけど、こっちは確か常連客とかが使う個室が並んでいるほうだよ。

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