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社長息子は受付嬢を愛慕う(仮)
第19章 奏多の本気
(今の……なに……)
私は私で軽いパニック状態。
だ……って……私を抱き締めた朝陽は……。
なぜと、どうしてが、頭の中を駆け回る。私は今抱き締められた感じを……知っている。
「……うっ……」
「!!
そう、朝陽!!」
バカな考えを隅に追いやり、したたかに打った背中を庇って起き上がって見れば、朝陽が腕を押さえて踞っているの! その押さえている手からは血が流れ……もしかして、三科さんのナイフは朝陽の腕を切り付けていたの!?
「朝陽!!」
慌てて朝陽の元に走る私。
踞る朝陽と、その向こうで朝陽に殴られ、完全に伸びている三科さんの姿。
三科さんなんてどうでもいい、今は朝陽のほうが先!
「朝陽、怪我!!」
「へーき、へーき」
「平気じゃないよ、なにか縛る物……」
「血、止めないとね」
「だから!」
「首のスカーフを強く巻けば止まるわ。……奏多が無事でよかった」
「……朝陽……」
いつも巻いているスカーフを取り、クルクルと腕に器用に巻きつける朝陽。手を離した時に一瞬だけ見えたの。出血はそれなりに多いって、服からでも分かるほど血が流れているんだって。
「朝陽、病院に行こう?」
「…………」
「どうして! そんなに血が出てるのに!」
「…………」
幾ら私が言っても、朝陽は首を横に振るだけ。
もしかして話せないほど酷いの? でも会社から救急車なんて呼べない、警察が関わることを会社が許すはずがない。
私まで座り込み、傷で渋い顔をしている朝陽を、ただ悲しい思いで眺めていた。