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社長息子は受付嬢を愛慕う(仮)
第24章 最後の……過ち
「僕はそこまで優しくはない、奏多が特別なだけ。普段の僕はこの優しさの影に隠れて人を追い落とす。それが僕の仕事の一部、伊礼の汚い部分を受け持つのが僕なんだよ奏多」
「そんな、そんな……じゃあ巽さんも……」
「巽も知ってはいるけど、極力関わらせないようにはしているよ。直情型の巽はこの仕事には向かない。だから奏多は心配しないで?」
「聖さんだけ全てを背負うなんて……」
私が知らなかったことを全部聞いて、私は涙が止まらない。どうして聖さんだけがこんな思いをしなくてはいけないの? 知っている巽さんはなぜ止めないの? こんなの……酷い。
「だから仕方がないんだよ奏多、伊礼を継ぐということはそういうことだからね。それに僕はもう割り切っているから、なにも思わなくなってしまった」
「そんな、そんなっ!」
「僕のために泣いてくれて、ありがとう奏多。その涙だけで僕は救われた気がするよ。そしてこれからも走っていけそうな気がする」
「聖……さん……」
悲しい運命。全てを持っているようで、なに一つ持っていない聖さん。心は変わらないけれど、出来る限り聖さんの支えにはなってあげたい私の想い。私に出来ることで少しでも聖さんがなにかを持てれば、私はそれ以上なにも言わないと思う。
「泣くと目が腫れてしまう。もう泣かないで奏多、気持ちは十分に伝わったから」
「まだ泣き足りないくらい」
「泣いてくれただけで、僕はこんなに幸せな気分になれたよ。全て奏多のお陰だね。思えば再会してから、僕は奏多の存在だけて救われていたんだね」