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社長息子は受付嬢を愛慕う(仮)
第25章 社長の前での決断

巽さんに『ありがとう』と言われて嬉しい。聖さんには先に『ごめんなさい』と言ったから、巽さんのその言葉がなによりも嬉しいの。選んだよ私……巽さんを選んだ、だって大好きなんだもの。

「やれやれ……。恋愛に疎い息子たちの噛ませ犬か。私からも、巽を選んでくれてありがとう夏目奏多さん。どちらかと言えば、巽のほうが心配だったから、これで漸く落ち着くことが出来そうだ」
「だから言ったでしょう、悪いようにはならないと。社長はこれで自由な恋愛観念の持ち主だからね」
「脅すのも得意だけどな」
「……はぁ」

もしかして、緊張していたのは私だけ!?
巽さんも、聖さんも、最初から理解していたんだ。……言ってくれればいいのに、どれだけ私が不安だったか、二人には分からないでしょう、もぅ!

「あぁ、元営業三科のことは不問だ。録画されてあった画像を見る限り、全面的に悪いのは向こう。巽の怪我は巽自身が隠していたツケだな。しかし……女装姿で『このやろう』とは……」
「今それを言うか親父っ! あの時はカッとなってつい……。なんで今更言い訳なんだよ、たくっ」
「あれは僕でも笑ったからね。同じく社長も肩を震わせて笑っていたよ」
「聖、お前も共犯かよ!」
「エントランスでのあれは、流石に耳に入れないわけにはいかなかったからね。言葉で説明するより、直接動画を見せたほうが早いと思っただけ」

み……見せたんだ聖さん。今考えると、私でも朝陽の姿で『このやろう』はないと思うもん。みんな同じ感覚だった、そう思うだけでホッとする。そして二人が言っていたように、社長って最後は甘いね。うん、子供たちに甘い人、それはそれで良かったと思えるよ。

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