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喪服奴隷・七菜
第17章 最終章
省吾が後ろを振り向くと、両手に包丁を抱えた七菜が
鬼の形相で立っているのが見えた。
「七菜、おまえ・・・」
よろよろと立ち上がった省吾は、そのまま前のめりになって玄関に倒れ込んだ。
『ハァハァ』、肩で息をしていた七菜がその場にへたり込む。
裁判で裁けないものなら、自分でけじめをつけるしかない。
残される香織が心残りではあるけれど、七菜はこの世に未練もない。
包丁を持ち変えて、自分の首筋に当てる。
隆の悲しそうな顔が、頭に浮かんでくる。ゴメンなさい、隆。

その時、猛烈な吐き気が七菜を襲う。
急いで洗面所に向かい、流しでゲェゲェ吐き出す。
胃のあたりからムカムカしたものがせり上がってくる。
再びえずく。人を殺めたから?
そうではない!七菜に浮かんだのは、それを根本から打ち消すものだった。
今月は生理が10日も遅れている。こんなに遅れることは今までにはなかった。
お腹に省吾の赤ちゃんを宿した?
このお腹の小さな命の父親を、私はたったいま殺めたの?
七菜の手から、包丁が滑り落ちてカラーンと音をたてる。
なんという運命の皮肉なんでしょう。
闇の中で稲妻が光る。雷鳴とともに、七菜はその場で泣き崩れていった。
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