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私を抱いて…離さないで
第1章 初恋の人

既に出来た涙の通り道を、新たな涙が次々と伝う。


『お前等は、保健所にいる捨て犬と同じだ!』


……悔しくて。でもどうする事もできなくて。
私は、未だに自分を卑下して生きてる。
『施設の子』としての生き方を植え付けられたまま……大きくなってしまった………


ハンカチを受け取り、目元に当てる。
瞬間、ふわりと爽やかな匂いが鼻孔を擽った。

……祐輔くんの匂い……
懐かしい……匂い……

胸の奥が柔らかく締め付けられて……
目を瞑ったまま、スン、とその匂いを肺に取り込む。

……多分、祐輔くんは……覚えていない。
私の事なんて……
私は施設でも、目立たない方、というか……存在感が無かったから。

「……大丈夫?ごめんね……」

美麗が、心配そうに私を下から覗き込む。
その瞳が綺麗で……
あの時のまま、同じで……

「……いえ。あの……」
「ん……?」

勝手に口が動く。
私は、何を言おうとしているんだろう。

……私は、一体何を……

「……次来た時、指名しても……いいですか…?」

予想外の台詞だったんだろう。
美麗──祐輔くんが、驚いた顔を一瞬だけ見せた。

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