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私を抱いて…離さないで
第2章 人と金と…
鈍器で頭をガツンとやられたような衝撃が走る。
……頼まれた……?
誰に……?
安藤先輩、に……?
「……安藤はさ、女堕とすのが趣味だから。
んで、釣った魚には適度に餌を与えて、飼育すんだよ。逃げらんねぇように。
安藤にとって女は、コレクションみてぇなもんで。ああ見えて薄情な所あっから、本気で誰かを好きになった事なんてねぇんじゃねぇの?」
「……」
……やっぱり。
私に優しくしてきたのは、取り巻きの一員に加えたかったってだけで……私がどうとかじゃ、無かった。
でも、何で突然──こんな事を私に……
「だから釣られねぇように、せいぜい気張んな」
そう言って、私の肩をぽんと叩く。
さっきとは違う、真剣に向けられた瞳。
どういう風の吹き回し、なんだろう。
後ろにいた他の二人が、「お前、なに地味子に格好つけてんだよ!」『だっせ』と揶揄し、ゲラゲラ笑う。
「じゃーな、地味子!」
もう一度ぽんと肩を叩き、此方を見ずに私の横を通り過ぎていく。
「……」
素行の悪さと見た目から、相容れない存在だと思っていたけど。
一歩踏み込んで見た事で、不思議と彼等の素顔が垣間見え、心に触れたような気がした。