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私を抱いて…離さないで
第1章 初恋の人

まだ小さいうちは、そこまで子供にかかる費用は少なかったのかもしれない。
大きくなればなる程、それに比例してお金は掛かるものだから。

だから私は、預けたままの方が都合が良かったのだろう。寝食を共にしない私に対して、他の兄弟よりも愛情が薄かったのかもしれない。

高校生になってやっと引き取られて。
……でも、私が両親に一番期待されたのは、働き手だった。
妹や弟が大きくなっていくにつれ、父の薄給と母の扶養控除内のパート代だけでは、苦しかったのだろう。
けど、私の通っていた高校ではアルバイトが禁止されていて、申請して許可が下りたのは、年末年始にだけ募集される郵便局のアルバイトのみだった。


……その僅かなお金さえ、全部むしり取られて。妹の修学旅行の積み立て代と塾代に充てられたんだよね。


静かに通帳を閉じる。
どんなに見ても、金額が変わる訳じゃない。


居心地の悪い家を早く出て、自立したいと強く思った。
だけどいくら『学歴社会は崩壊』等とメディアが発していても、求人をみればそうではない現実がそこにある。

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