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私を抱いて…離さないで
第3章 パパ

しん……と、静まり返る空間。
先程とはまた違った雰囲気に、重苦しさを感じる。
でも、美麗本人は何も感じていないのか。顔を近付け、涼しげな瞳で大山を見つめる。

「それに──美紀子ちゃんの品位を落とすだけだから、気をつけようね」
「……!」

その瞬間……空中で化学反応でも起こったかのように、重苦しかった空気が柔らかでふわふわとしたものに変わる。

「………ごめんねぇ、川口さん!」

此方へと振り向いた大山が、私の両手を拾い上げる。眉尻を下げ、うるうるとした瞳を向け、今にも泣き出しそうな表情で。

「ううん……」

答えながら目を伏せ、首を左右に振れば、今度は美麗の方へと振り返る。

「美麗くんも、ごめんね。……言いにくい事言わせちゃって……」
「いや。……俺も、キツい事言ってごめん」

美麗が大山の顔を覗き込み、優しく微笑む。首を少し傾げ、片手で頭をぽんぽんしながら。

「つーか、美紀子ちゃん。普通にいい子じゃん!」

一連の様子を傍観していた琉偉が、表裏のない声で割り入る。それに気を良くした大山が、少し照れた笑顔を琉偉に見せた。
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