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私を抱いて…離さないで
第3章 パパ

トクン、トクン、トクン、トクン……
先生の心音。
穏やかで……心地良い。
私の全てが、まるで11歳のあの頃に戻ったよう。
「……」
父にも、母にも、……誰にも。
こんな風に、優しく抱き締められた事なんてなかった。
手を回し、先生の背中にそっと触れる。
温かい……
濡れた睫毛を下ろし、呼吸を整えようとすれば、先生の手が優しく私の後頭部を包む。
ゆっくり撫でる、大きな手のひら。
まるで、幼子をあやすかの様で……心地良い。
もっと、甘えたい。
「……」
全てを先生に委ねれば、今まで張り詰めていた心の奥までが、緩んで溶けていくのを感じた。

