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私を抱いて…離さないで
第3章 パパ

「川口さん」

帰り支度をし、バックヤードから出た私に店長が声を掛ける。
見れば何処か落ち着かない様子で、辺りをキョロキョロしていた。

「ちょっと、話があるんだけど。……時間いい?」
「はい」
「じゃあ、その………ここじゃ何だから。外で」
「………はい」

そう返事をしたものの、店長の様子に不安が募る。


店を出て、繁華街へと足を向ける。その道すがら、ぽつんと佇むウッドベースの小さな喫茶店。「ここで、いい?」と、店長が私に確認を取り、店のドアを開ける。
通されたのは、奥の窓際。隣の席が見えない個室のような造りのボックス席に、店長と向かい合って座る。

「………何か、飲む?」

そう言って、メニュー表を渡される。笑顔を浮かべる辺り、気遣ってくれているんだろう。
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