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私を抱いて…離さないで
第1章 初恋の人

数秒……会話が止まり、時が止まる。
電話の奥は相変わらずざわざわとし、先程よりも音がハッキリと聞こえる。
妙な沈黙は居心地が悪く、何か話さなければ……と、口を開きかけた時だった。
「………あ、うん。ごめんっ。
変な事聞いちゃって」
ははっ、と笑った祐輔くんの声が、明るくて元気がありながら………少し落胆したように感じた。
「ごめんね。突然電話して」
「……ううん」
「じゃあ、またね!」
明るい声。だけど多分、次はない。
多分もう、掛かってこない。
どうしよう。
まだ──電話は繋がってる。
今ならまだ、間に合う。
「──待って!」
引き止めてしまった。
もう……引き返せない……
「会いたい」
「……え」
「美麗くんに……」
精一杯の勇気を振り絞る。
息が上がる。震える。身体中が熱い。
ドクン、ドクン、……
「……ありがとう」
祐輔くんの明るい声。
だけど、重みのある口調。
嬉しさと。ホッと安心した気持ちと。色んな感情が入り混じり、私の心にストンと落ちる。
「うん……」
もう、躊躇なんかしていられない。
──稼がなくちゃ。

