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私を抱いて…離さないで
第3章 パパ
涙で滲んだ瞳を片手で拭い、ロッカーを開ける。
扉に付いた、小さな鏡。
そこに映る顔は血色が悪く、隈もできていて……酷く窶れたように見える。
「……」
元に、戻った訳じゃない。
私だけが、周囲の流れから……取り残されてしまってる。
早く、追いつかなくちゃ……
溢れそうになる感情を、理性で抑えつける。
辛いのは、今だけ。
大丈夫。
時が経てば、これが当たり前に思える日がくるから。
そう何度も思い直そうとしても、今はただ、苦しいだけ……
子供の頃はもっと、毅然とした態度で現実を受け入れられたのに。
どうしてこんなに、弱くなっちゃったんだろう……
……パタン
ロッカーの扉を、そっと閉める。
鏡に映った現実から、目を背けながら。