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私を抱いて…離さないで
第3章 パパ
店を出て駅に向かう道すがら、近道となる公園の中を通る。
あの一件があってから、暫く避けていたルート。けど今は、煌びやかな大通りを歩きたくない。
園内に広がる暗闇。そこにぽつんと灯る外灯が、かえって心をを落ち着かせてくれた。
遊歩道を歩いていると、例の藤棚が見えてくる。そこからスッと現れる人影。驚いて見れば、抱っこ紐で赤ん坊を前抱っこし、缶ビール片手に散歩をするスーツ姿の男性が。
「………あれ、」
目を逸らそうとして、声を掛けられる。
「店員さん?」
「……え?」
店員、というフレーズに、つい反応して足を止める。
「そこの、ディスカウントショップの……」
「……」
「って、覚えてない……、か」
憂いを帯びたように苦笑いをしながら、男性が申し訳無さそうに顔を横に向け、視線を逸らす。
「──あ、!」
思い出した。
以前、バイト先に来た、草臥れたサラリーマン。