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私を抱いて…離さないで
第1章 初恋の人
そんなに浮かない顔をしていたんだろうか。真っ直ぐに向けられた瞳が私の表情を読み取ると、申し訳無さそうに眉尻を下げた。

「来週の……24日。俺、二十歳になるからさ……」
「……え」
「果穂ちゃんにお祝いして貰えたら、凄く嬉しい」
「………」

動揺を隠せないまま、目を伏せる。
もう、援交は止めるって……決めたのに。
その決意はグラグラと大きく揺れ、脆くも崩れ落ちてしまう。
そして新たに築かれたのは、別の決意──祐輔くんの為に続けるっていう、固い決意。

「………うん、」

顔を伏せたまま小さく答えれば、祐輔くんの手が、私の頭をぽんぽんとした。

たった、それだけ。
なのに………凄く嬉しい。



チン、とエレベーターのドアが開く。
乗り込んだ私に笑顔で手を振り、閉まる寸前まで、私を優しく見つめてくれる。

この別れ際の瞬間は……堪らなく淋しい。
でも……ドアひとつ隔てた向こうに、まだ祐輔くんが此方を向いて立っているような気がした。

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