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私を抱いて…離さないで
第2章 人と金と…
* * *
雨の中──
ふらふらと無気力に歩いていた私は、駅に着いてお金が無い事に気付いた。
PASMOにチャージしておくんだった……なんて、どうでもいい事を、疲弊した心の中で呟く。
「……ちょっと君、大丈夫……?」
全身ずぶ濡れの私に、見知らぬ男性が声を掛けてくる。
親切心からなんだろう……だけど、反射的に身構える。
「えーっと、傘、……よりまず拭くものはぁー、っと。……あー、これしかないけど、使ってよ」
スーツ姿の禿げかかったおじさんが、スラックスのポケットを弄り、寄れた灰色のハンカチを取り出す。
「……ほら」
「……」
ずいと押し付けられるそのハンカチ。
前髪の毛先から零れ落ちた雫が、その布地に小さな染みを作る。
「……」
……気持ち悪い。
その寄れたハンカチが。
握りしめるおじさんの手が。
気持ち悪い。
汚い。
雨に濡れすぎたせいか。
それとも、このお節介行為自体のせいか──或いはその両方か。
身体が小刻みに震えて、止まらない。
雨の中──
ふらふらと無気力に歩いていた私は、駅に着いてお金が無い事に気付いた。
PASMOにチャージしておくんだった……なんて、どうでもいい事を、疲弊した心の中で呟く。
「……ちょっと君、大丈夫……?」
全身ずぶ濡れの私に、見知らぬ男性が声を掛けてくる。
親切心からなんだろう……だけど、反射的に身構える。
「えーっと、傘、……よりまず拭くものはぁー、っと。……あー、これしかないけど、使ってよ」
スーツ姿の禿げかかったおじさんが、スラックスのポケットを弄り、寄れた灰色のハンカチを取り出す。
「……ほら」
「……」
ずいと押し付けられるそのハンカチ。
前髪の毛先から零れ落ちた雫が、その布地に小さな染みを作る。
「……」
……気持ち悪い。
その寄れたハンカチが。
握りしめるおじさんの手が。
気持ち悪い。
汚い。
雨に濡れすぎたせいか。
それとも、このお節介行為自体のせいか──或いはその両方か。
身体が小刻みに震えて、止まらない。