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私を抱いて…離さないで
第2章 人と金と…
* * *
もう、やめよう。
そう思っていたのに、期待してしまう。
期待するから傷つく事くらい、解っているのに……
「果穂ちゃん」
講義が終わり、鞄を持って廊下を歩いていると、背後から声を掛けられた。
振り返ってみれば、案の定、安藤先輩。
相変わらず優しげな雰囲気を醸し出し、無駄のない爽やかな笑顔を向ける。
「今帰り?」
「……え」
「それなら、一緒に帰ろう」
「……」
以前より、近い距離。
ふわりと香る、爽やかなミントグリーン。
半歩後退れば、同じ距離を詰めてくる。
何で……
「……あ、ちょっと動かないで」
「え……」
俯いた私に伸ばされる手。その指が天辺より後部の髪に柔く触れ、離れる。
「……取れた」
先輩の掌に乗った、小さな白い塊。
「ん、何だこれ。……消しゴム……?」
「──!」
消しゴム。
背後から襲う、嫌な記憶。
忘れもしない……学校での扱い。
施設の子だと蔑まれ虐げられた、日々──
もう、やめよう。
そう思っていたのに、期待してしまう。
期待するから傷つく事くらい、解っているのに……
「果穂ちゃん」
講義が終わり、鞄を持って廊下を歩いていると、背後から声を掛けられた。
振り返ってみれば、案の定、安藤先輩。
相変わらず優しげな雰囲気を醸し出し、無駄のない爽やかな笑顔を向ける。
「今帰り?」
「……え」
「それなら、一緒に帰ろう」
「……」
以前より、近い距離。
ふわりと香る、爽やかなミントグリーン。
半歩後退れば、同じ距離を詰めてくる。
何で……
「……あ、ちょっと動かないで」
「え……」
俯いた私に伸ばされる手。その指が天辺より後部の髪に柔く触れ、離れる。
「……取れた」
先輩の掌に乗った、小さな白い塊。
「ん、何だこれ。……消しゴム……?」
「──!」
消しゴム。
背後から襲う、嫌な記憶。
忘れもしない……学校での扱い。
施設の子だと蔑まれ虐げられた、日々──