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私を抱いて…離さないで
第2章 人と金と…
『やっぱりない。私の消しゴム』
『……どっかに落とした?』
『ううん。ちゃんとここにしまったもん』
『──それさぁ、犯人川口じゃね?』
それは、休み時間に起こった。
カースト中間位の女子数人のグループに、上位の男子が混ざる。
『俺、川口が物欲しそうにお前の消しゴム見てたの、見たぜ』
『………え、そうなんだ……』
『なにそれ。いくら欲しいからって、人のものを盗むのは許せない』
『……だよなぁ』
──私は、知らない。
そんなもの、見てもいない。
ましてや盗むなんて事も、一度だってした事なんてないのに……
席から一歩も動かず、背中を丸めて存在を隠す。……机の木目も色も、空で描ける程、目に焼き付けながら。
……だけど、授業が始まれば……
『……ビンゴ!』
背後の席から飛んでくる、千切れた消しゴム。先生が黒板に向いた瞬間。何度も。……私は反撃しない、生きた的。
足元の床は、千切った消しゴムだらけ。
机や、髪の毛にも──