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兄の帰還 壁越しに聞こえる妻の嬌声
第2章 壁越しに聞こえる妻の嬌声
翌日、旅行から両親が帰ってくると、突然、兄が研究のためオーストラリアへ行くと言い出した。
「前から決めてたんだ。俺はやっぱり海がいい」
既に手配は終わっており、一週間後には旅立つという。僕は悲しかったが、正直、ホッとする自分がいるのもわかる。琴美も同じかも知れない。
「兄さん、僕……」
その夜、二人になったとき、僕は兄に謝ろうとした。昨日のこと、それに兄の妻を奪ったことを。結局、僕は琴美を兄から奪い、それを兄に自慢するように見せつけたに過ぎない。そんな自分がたまらなく嫌だった。
でも、言葉が出て来なかった。どう言っていいのか、僕にはわからなかったからだ。いつの間にか、僕は涙を流していた。
そんな僕の肩を叩きながら、
「いい夫婦になったな。琴美をよろしくな」
兄はそう言ってくれた。
「前から決めてたんだ。俺はやっぱり海がいい」
既に手配は終わっており、一週間後には旅立つという。僕は悲しかったが、正直、ホッとする自分がいるのもわかる。琴美も同じかも知れない。
「兄さん、僕……」
その夜、二人になったとき、僕は兄に謝ろうとした。昨日のこと、それに兄の妻を奪ったことを。結局、僕は琴美を兄から奪い、それを兄に自慢するように見せつけたに過ぎない。そんな自分がたまらなく嫌だった。
でも、言葉が出て来なかった。どう言っていいのか、僕にはわからなかったからだ。いつの間にか、僕は涙を流していた。
そんな僕の肩を叩きながら、
「いい夫婦になったな。琴美をよろしくな」
兄はそう言ってくれた。