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裏切りの幼なじみ
第1章 プロローグ

「すみません。町田美由紀さん、ですよね。覚えてませんか? 俺です、隆志です。小塚隆志。ほら昔よく一緒に遊んだ幼なじみの……あっ、ゴメン!」
彼女が急に立ち止ったせいで、ふたりの身体がボムっと接触した。麗しい香りに胸が高鳴る。その美女が隆志にグッと向き直った。
「憶えてるけど、それがなにか?」
「え? なにかって……」
美少女が纏うワインレッドのフレアスカートとジャケット。白のインナーシャツが胸の谷間ギリギリを覗かせて膨らみ、ジャケットのひとつのボタンだけで押さえられている。
美由紀は唾棄のような溜息で乳房を揺らす。
「悪いんだけど、あんまり気安く話しかけないでくれるかしら?」
無慈悲な言葉を吐く美少女の息は、淫靡な唾液香と湿り気を帯びていた。
「ご……ごめん……」
立ち尽くす隆志を尻目にモデルのようにターンし、ヒール音を鳴らして美由紀が遠ざかっていく。隆志の周囲にはまだ、彼女の匂いだけが色濃く漂っていた。
* * *
この日は初の本館実習だったのだが、隆志はずっと上の空だった。
何を学び、どうやって自宅に戻ったのかさえ記憶が曖昧だった。
気付けば自室のベッドに着衣のまま倒れ伏せていた。
(あの傲慢な態度……何様だよ)
学園内で囁かれる噂が脳裏に浮かんだ。
『スクールカースト』
女ばかりの本館は薔薇色の楽園。高根の花の美女たちはプライドも高いという。
同じ東美学園でも、別館の男たちからすれば別世界の住人だとか。
ファッション・デザイン系の人気専科を持つ本館は、線路を渡った橋の向こうにそびえ立つ。徒歩五分ちょっとの距離だが、近くて遠い楽園。
そして本館の女子たちは男ばかりの別館を指して「橋の下の人たち」「オタクの館」などと嘲笑しているというのである。
「カーストだなんて、女子高じゃあるまいし……」
そんな噂など、気にしていなかった。卑屈な男が勝手に作り上げた都市伝説に過ぎないと思っていた。今日までは……。
現実は割と残酷なのかもしれない。
(せっかく再会できたってのに、あんな高慢女じゃ……でも匂いは甘くてエロかったな)
隆志はベッドからようやく起き上がると、引き出しの鍵を開け、奥から一冊の古いスケッチブックを引っ張り出した。
彼女が急に立ち止ったせいで、ふたりの身体がボムっと接触した。麗しい香りに胸が高鳴る。その美女が隆志にグッと向き直った。
「憶えてるけど、それがなにか?」
「え? なにかって……」
美少女が纏うワインレッドのフレアスカートとジャケット。白のインナーシャツが胸の谷間ギリギリを覗かせて膨らみ、ジャケットのひとつのボタンだけで押さえられている。
美由紀は唾棄のような溜息で乳房を揺らす。
「悪いんだけど、あんまり気安く話しかけないでくれるかしら?」
無慈悲な言葉を吐く美少女の息は、淫靡な唾液香と湿り気を帯びていた。
「ご……ごめん……」
立ち尽くす隆志を尻目にモデルのようにターンし、ヒール音を鳴らして美由紀が遠ざかっていく。隆志の周囲にはまだ、彼女の匂いだけが色濃く漂っていた。
* * *
この日は初の本館実習だったのだが、隆志はずっと上の空だった。
何を学び、どうやって自宅に戻ったのかさえ記憶が曖昧だった。
気付けば自室のベッドに着衣のまま倒れ伏せていた。
(あの傲慢な態度……何様だよ)
学園内で囁かれる噂が脳裏に浮かんだ。
『スクールカースト』
女ばかりの本館は薔薇色の楽園。高根の花の美女たちはプライドも高いという。
同じ東美学園でも、別館の男たちからすれば別世界の住人だとか。
ファッション・デザイン系の人気専科を持つ本館は、線路を渡った橋の向こうにそびえ立つ。徒歩五分ちょっとの距離だが、近くて遠い楽園。
そして本館の女子たちは男ばかりの別館を指して「橋の下の人たち」「オタクの館」などと嘲笑しているというのである。
「カーストだなんて、女子高じゃあるまいし……」
そんな噂など、気にしていなかった。卑屈な男が勝手に作り上げた都市伝説に過ぎないと思っていた。今日までは……。
現実は割と残酷なのかもしれない。
(せっかく再会できたってのに、あんな高慢女じゃ……でも匂いは甘くてエロかったな)
隆志はベッドからようやく起き上がると、引き出しの鍵を開け、奥から一冊の古いスケッチブックを引っ張り出した。

