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恋する真珠
第2章 恋するカナリア
「瑠璃ちゃん、本当にもう帰るの?
瑠璃ちゃんを蘇州に連れて行きたいって真紘さん、楽しみに計画していらっしゃるのよ」
上海のアパルトマンのゲストルームでスーツケースに荷造りする瑠璃子に、名残惜しそうに由貴子が尋ねる。
「うん。バレエのお稽古、あんまり休みたくないし…。
夏期講習も後期分申し込んでいるし、部活もあるしね…」
瑠璃子は支度をしながら、笑いかける。
「…一番大切な理由を言ってないわね?瑠璃ちゃん」
由貴子が優しく瑠璃子の髪を撫でる。
母からは相変わらず芳しい白檀の薫りが漂う。

「ママ?」
「…涼太さんに会いたいんでしょ?」
蜂蜜色の紗幕が掛かった寝台に腰掛けながら、由貴子はその美しい瞳を細めながら瑠璃子の顎を摘んだ。
琥珀色のチャイナドレスの母は、まるで謎めいた中国美女のように神秘的に優雅に美しい。
「…ママは何でもお見通しなのね」
瑠璃子は苦笑する。
「そうなの。涼ちゃんに会いたいの。
…もうすぐ十七歳の誕生日だし…」
由貴子がわざとため息を吐いて、しなやかに立ち上がる。
「私と真紘さんだって瑠璃ちゃんのお誕生日会を計画していたのよ?
北京に行って京劇を観たり、本場の北京ダックを食べたり…。
瑠璃ちゃんと誕生日を過ごせるのを楽しみにしていたのに…。
…段々、ママたちから離れてゆくのね…」
しんみりした口調に、本音が滲んでいた。
「…ママ…」
困ったように振り返る瑠璃子に、濃紺の宝石箱から取り出されたのは本真珠のイヤリングだ。
「…今年はイヤリングにしたわ。
瑠璃ちゃん、まだピアスは開けていないでしょ?」
「うん。涼ちゃんがピアスは開けるなって…。
…わあ…綺麗!ありがとう、ママ」
「…少し早いけれど…お誕生日おめでとう」
由貴子が愛の籠った優しい仕草で、瑠璃子の桜貝のように初々しくも可愛らしい耳朶に真珠のイヤリングを着けてやる。
そうして、オーダーメイドの真紅のショート丈のチャイナドレスを身につけた最愛の…美しく成長した娘をうっとりと見つめた。
「…とっても綺麗だわ…。
…瑠璃ちゃん、本当に美人ね…。
まるで中国のお伽話のお姫様のよう…」
「ママったら…もう。本当に親バカね」

…恥ずかしそうに笑う瑠璃子は三日後、十七歳になるのだ。



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