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恋する真珠
第2章 恋するカナリア
…瑠璃子は高校二年生の夏休みに、上海を訪れていた。
長い夏休みは上海の由貴子の元に滞在するのが高校に進学してからの恒例になっていた。
大恋愛の末に結ばれた由貴子と事実婚の夫、宮緒真紘は今も上海の旧フランス租界にあるアパルトマンに住んでいる。
宮緒は上海のホテルの支配人であり…最近は社長に昇格したらしい。
由貴子は本郷の家の管理があるので、時折日本に帰国する。
だから由貴子とは2、3ヶ月置きには会っているので寂しいと思ったことはない。
兄の柊司は週末になると澄佳の家で週末婚のライフスタイルだし、澄佳は瑠璃子を実の妹のように可愛がってくれる。
宮緒は瑠璃子をとても大切にしてくれるし、由貴子と瑠璃子の時間も尊重してくれる。
自分はとても恵まれているのだと少し大人になった瑠璃子はしみじみと思うのだ。
…だから、こんなことを提案したのだ…。
瑠璃子はふと、数日前の出来事を思い出した。
「ねえ、真紘さん。
ママと正式に籍を入れていいのよ?」
由貴子が師と仰ぐ朱浩藍の春風楼の黒檀の長机で宮緒と向かい合いながら、瑠璃子は声を潜めた。
…由貴子はつづき部屋で朱と茶芸教室の話をしていた。
今や由貴子は朱の一番弟子であり、教室の助手なのだ。
高価な茶器や陶磁器に囲まれ、様々な中国茶の香気の中、鮮やかな中国服を身に纏った美貌の二人が語り合う姿は、まるで一枚の錦絵のように美しい…。
…中国の男性って朱先生みたいにシルキーに綺麗なのかな…。
思わず見惚れるほどに、朱は麗しく優雅だ。
竜胆色の長袍は繊細な刺繍が施されており、艶やかな長い黒髪の朱が纏うと、中国古典の美しい仙人のようだ。
「瑠璃ちゃん…」
宮緒は眼鏡越しに優しく微笑んだ。
…このひとも、ホテルの社長にしておくのは惜しいような端正な美男子だけども…。
…ママが上海から帰りたくない気持ちも、すごく分かるわ…。
瑠璃子はそっと心の中で呟いた。
長い夏休みは上海の由貴子の元に滞在するのが高校に進学してからの恒例になっていた。
大恋愛の末に結ばれた由貴子と事実婚の夫、宮緒真紘は今も上海の旧フランス租界にあるアパルトマンに住んでいる。
宮緒は上海のホテルの支配人であり…最近は社長に昇格したらしい。
由貴子は本郷の家の管理があるので、時折日本に帰国する。
だから由貴子とは2、3ヶ月置きには会っているので寂しいと思ったことはない。
兄の柊司は週末になると澄佳の家で週末婚のライフスタイルだし、澄佳は瑠璃子を実の妹のように可愛がってくれる。
宮緒は瑠璃子をとても大切にしてくれるし、由貴子と瑠璃子の時間も尊重してくれる。
自分はとても恵まれているのだと少し大人になった瑠璃子はしみじみと思うのだ。
…だから、こんなことを提案したのだ…。
瑠璃子はふと、数日前の出来事を思い出した。
「ねえ、真紘さん。
ママと正式に籍を入れていいのよ?」
由貴子が師と仰ぐ朱浩藍の春風楼の黒檀の長机で宮緒と向かい合いながら、瑠璃子は声を潜めた。
…由貴子はつづき部屋で朱と茶芸教室の話をしていた。
今や由貴子は朱の一番弟子であり、教室の助手なのだ。
高価な茶器や陶磁器に囲まれ、様々な中国茶の香気の中、鮮やかな中国服を身に纏った美貌の二人が語り合う姿は、まるで一枚の錦絵のように美しい…。
…中国の男性って朱先生みたいにシルキーに綺麗なのかな…。
思わず見惚れるほどに、朱は麗しく優雅だ。
竜胆色の長袍は繊細な刺繍が施されており、艶やかな長い黒髪の朱が纏うと、中国古典の美しい仙人のようだ。
「瑠璃ちゃん…」
宮緒は眼鏡越しに優しく微笑んだ。
…このひとも、ホテルの社長にしておくのは惜しいような端正な美男子だけども…。
…ママが上海から帰りたくない気持ちも、すごく分かるわ…。
瑠璃子はそっと心の中で呟いた。