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さすがに無理やろ
第12章 いよいよ
「それから葵ちゃんは
村瀬さんと結婚して
私は再就職を」

「それで今の会社に?」

「はい。
でも不安でした。
また同じようなことが
起きるんじゃないなって。
そしたら
葵ちゃんが考えてくれたんです。
陰湿ないじめと
セクハラに合わないように」

「モテんようにやな」

「はい。
女性からも
羨ましがられず
男性からは
誘われたりしないように。
それから…」

「それから?」

「真面目に仕事を」

「まぁ…
真面目に越したことはないけど」

「私、知ってるんです」

「ん?」

「ロボットみたいだって
言われてることも
私に仕事を
押し付ければいいって
言ってることも」

「……」

「でもいいんです。
利用されていれば
嫌がらせは受けないので」

「その敬語も?」

「はい。
誰にでも
同じように話せば
問題は起きないので」

なんちゅう
徹底ぶりや…
淡々と話してるけど
おそらく
前の会社で起きたことは
かなりキツかったんやろうな
そうやなかったら
ここまでせぇへん

「辛ないか?」

「はい」

「ただ働くだけの毎日やろ?」

「それでも
前の会社に居た頃より幸せです。
仕事をすれば認めてくれますし
仕事上ですが
会話があります。
私のことを
悪く言う人がいても
ロボットとか冷たいとか
でもそれは
嘘でも作り話でも
ありませんから。
私が…
そうしてるんですから…」

そう言って
少しうつむいた青山さんを
俺はギュッと抱きしめた

ほんまは
そない性格やない
せやから
労働時間中
ずっと偽って生きることが
幸せなわけがないんや

けど
そうせんと働けんほど
青山さんは
疲れてもうたんやろう

側におった葵ちゃんまでも
そうすべきやと言うほど
壊れてしもうたんやろう

…ほんまに…可愛そうに…

「だから…
新飼さんのこと
信じられないなんて
失礼なことを言ってしまって…
すみませんでした。
これまでの『好き』は
全部
嘘だったから…」

「気にしてへん」

俺は
短くそう答えて
青山さんの
柔らかな唇に唇を重ねると
青山さんの手は
もう離れたくない
とでも言うように
ぎゅーっと俺を締め付けた

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