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さすがに無理やろ
第13章 とんだ悪魔

週末
仕事帰りに会うた時は
あんなに明るうて元気やったのに
ほんま
可愛そうに…

それから水本さんは
少しずつ酒を飲みながら
ポツリポツリと
話をはじめた

要は
社内の男と
付き合うたことが無いわけやないけど
それは真剣な交際で
噂になってるようなことはない
そやのに
とっかえひっかえ
男と遊んでるとか
貢いでもらってると言われて
困ってるんやと

なんや
聞いたことある話やな…
青山さんが
水本さんの気持ちが分かる言うてたんは
このことやったんか

けど…
俺には
何がしてやれるんや?
話は聞いてやれるけど
水本さんを救うことなんか
できるんやろうか

「すみません、こんな話して」

「いや、ええねん。
それはええけど
どうしてあげたらええんか…」

「いいんです、
聞いてくれるだけで。
新飼さんが
本当のことを
わかってくれてると思うだけで
救われます」

「それならええんやけど…。
あ、もちろん
噂してる奴らがおったら
全力で否定するから」

「ありがとうございます」

頭を下げる水本さん
えらい今日はしおらしいなぁ
やっぱり
堪えてんのやろな…

「あの…新飼さん」

「ん?」

「お礼にと言っては
なんなんですけど…」

「なんや?」

「あの…こんなこと
言っていいのか分からないんですけど…」

「どないした?
なんでも話してええで?」

「…はい。
とても心配なので…話しますね。
もしかして
青山さんとお付き合いしたりしてます?」

えっ?!
なんで?
なんでそんなこと知ってんねん!
と、俺は内心かなり動揺したけど
「いや、付き合うてないけど」
と、かなりええ感じで即答した

「よかった…
ほんと良かったです」

「なんで…良かったんや?」

「それは…
あ、すみません、
ちょっと酔っちゃったかも。
暑くなってきたから
脱いでもいいですか?」

「あ、あぁ
かまへんけど」

少し顔が赤くなった水本さんは
手で頰を仰ぎながら
着ていた長いカーディガンを
脱ぎはじめた

けどそんなん
どうでもええ

とにかく俺は
何が「良かった」のかと
なんで付き合うてるんかって
水本さんが聞いたんか
それが気になって気になって
仕方がなかった
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