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さすがに無理やろ
第16章 きっかけ
それから俺達は
手を繋いで
マンションまで
ゆっくりと歩いた

部屋に入ると
どちらともなく
キスをして
どちらともなく
服を脱がせあい

そして

ベットで
愛し合った

その間
俺達は
ほぼ言葉を交わしていない

会話は
身体を触れ合わせることで
愛していることを
相手に伝えようと
必死だったのかもしれない

いや
愛されてることを
確認したかったのかもしれない…

とにかく俺達は
むさぼるような
セックスに溺れたんや

それやのに
そんなセックスが終わってもなお
離れることはなく
まるで
離れてしまったら
別れでも訪れるかのように
身体を触れ合わせていた

裸のまま足を絡ませ
髪を撫で
頬擦りを何度もし
キスを重ねる
水を口移しし
肩を髭でくすぐり
ユリも時々
俺の髭に頬を寄せた
そして
ユリを俺の上に重ならせ
抱きしめて尻を触ったり
背中から抱きしめて
耳にキスをしたり…
俺達は
飽きることなく
そんなことを続けている

大事なことは
全く話さないで。

あぁ
そうか
ユリは怖いのかもしれへん

もう
普通に戻ろうと
内心決意したものの
そうすることへの恐怖で
俺にしがみついてるんやないやろうか

まるで
登校拒否を克服しようとする
子供のように…

「ユリ」

「ん?」

「もう行かんでもええで」

「え?」

「会社」

「……」

「もう十分頑張って来たんや。
これ以上頑張らんでええ。
俺のユリでおってくれたらええ」

そう言って
俺はユリを背中から
ギュッと抱きしめた

「そうは…いかないよ」

わかってる
責任感の強いユリや
引き継ぎもせんと
突然辞めるとか
できるわけがない

「せやかてな」

「…うん」

「眼鏡外して
髪下ろして
普通のユリで会社行ったら
絶対モテモテで
男全員ジロジロ見んねんで?
まぁそのユリは俺の女やー
言うて自慢したいから
それはそれで楽しみなんやけど
とにかく可愛いらしいユリを
みんなに見せんの
心配でしゃあないねん」

「え?」

「ん?」

「心配なのそこ?」

そう言いながら
ユリは振り向いて
クスクスと笑った
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