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さすがに無理やろ
第3章 峰不二子の攻撃
幸い廊下には誰もいない
俺はもう
電話で話すのをやめて
水本さんに近づき
そして
水本さんの肩を叩いた
「大丈夫か?」
「……」
すると水本さんは
俯いたまま
小さく首を横に振った
「噂なんか気にせんでも」
「でも…違うから…私そんなんじゃ…」
わっ、水本さん泣きそうやんけ!
あーーマズイ
このままやったら
俺が水本さん泣かしてるみたいやんか
慌てた俺は
とりあえず
とりあえずやけど
「話なら聞くで?」
と、水本さんに
甘い言葉を囁いてしまった
すると水本さんは
電話を両手で握りしめ
潤んだ瞳で俺を見上げながら
「……嬉しい…」
と、呟いた
可愛い…
それは
文句なしに可愛いかった
なんやもう
一回騙されてもかまへんと思うてまうくらい
クラッときた
あの噂が本当なら
どんだけ魔性やねん!
けど
それがもし演技でないなら
それはそれで
ほんまモンの魔性やなぁ…
いや、わかってるで?
女からしたら
それは絶対演技やし
そんな女に騙されるとかアホちゃう?
そう思うてるやろ?
せやねん
男はどーしよーもなく
アホやねん!!
せやから
それはホンマに
誘惑やのうて相談かも知れへん
とか思てまうんよな…
「今日とか…お時間ありますか?」
「あー…せやなぁ…」
どないしよ
どないしよどないしよ
どないしよーーー
と、思ったその時
廊下の向こうから青山さんが歩いてきてしまった
いや、違うねん!
泣かしてないし
口説いてないし
水本さんとは
まだなんもないねんっ!!
俺はそう心の中で叫びながら
ほんの少し水本さんから離れたんやけど
青山さんは
「おはようございます」
と、俺と水本さんに会釈しながら声をかけ
真面目な表情のまま通り過ぎてしまった
そしてその姿を見送った水本さんは
俺の袖をちょいとつまみ
また
あの魔法のような上目遣いで
俺を見つめた
「待ってても…いいですか?」