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さすがに無理やろ
第7章 揺れる青山さん
「あ、せや青山さん」
「はい」
「次、いつ飯行く?」
「えっ…」
もうここは駅の中
こんな目立つとこで
俺と会話してんのを
青山さんは見られたないはずや
せやからこそ
このタイミングでの次の約束
迷わせへんように
「友達やろ?」
「あ、ええ…」
「俺としては明日でもええねんけど
さすがに引かれそうやから
次の週末どうや?
金曜日とか」
強引なんは分かってるけど
ここは何としても約束せんとあかんねん
「あー…」
青山さんは
周囲が気になるようで
落ち着きがない
もう一押しや
「とりあえずな
とりあえず約束しといて
残業なったら
また違う日にしてもええし」
「じゃあ、はい」
後で断ってもええ
とりあえず早く電車に乗りたい
青山さんの顔には
そう書いてあった
「よっしゃ!
ほな、気いつけてな」
「あ、はい。
ありがとうございました」
「ほな」
「はい、じゃあ」
別れは
心とは裏腹に
あっさりと。
とにかく
誰にも見られたないという
青山さんの気持ち最優先や
まぁ
最初から
歯切れの悪い別れ方は
せぇへんつもりやったから
俺は
青山さんの背中を見つめることもせず
一度も振り向くこともなく
駅を後にした
ほんまは
ずっと背中を見送りたかったけど
そんな名残惜しさを噛みしめながら歩いていると
遠くから
俺の名前を呼ぶ声が聞こえた
「新飼さん」
…?
誰や?
……どっかで聞いたことある声やな…
そう思いながら
その声の主を探すと
そこには
俺を追いかけてくる
隣駅の居酒屋の店員の姿が見えた
あー…
青山さんの友達やんけ
けど、俺に何の用や?
「あー…
居酒屋の…」
「あ、はい。
青山さんの友達で
居酒屋『村瀬』の」
「こんばんは。
どないしたんですか?」
「ちょっとお話があって。
少し…いいですか?」
「あぁ、はい」
何の話やろ…
そう思いながら
人の流れを避けて
道路の端に移動すると
村瀬の店員さんは
いきなり俺を問い詰めはじめた
「どういうつもりですか?」
「…え?」