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お園さん
第9章 途切れない関係

でも、一度、関係が途切れた時がある。それは、私が23歳、商社に就職した年だった。

「もう一度、結婚しようかと思うの」

セックスの後、突然、お園さんが言い出した。

「えっ、もう一度?」
「ええ、若い時に一度結婚したことがあるの」

私はお園さんがずっと独身だったと思っていたが、彼女が話してくれたことによると、24歳の時に、中小企業の御曹司と結婚したが、結婚6年目に事業が失敗し、その借金の形にお妾さんになったそうだ。

「めかけ……」
「雄一が『不潔!』って言った男よ」
「えっ、あの白髪頭の?」
「そう、あの男。あなたが『不潔』って言った通りだったの。でもショックだったわ。可愛い高校1年生に言われたんだから、あははは」
「いや、あれは」

何も知らないとはいえ、酷いことを言ってしまったものだ。

「じゃあ、今度の相手は?」
「一つ年上、銀行の副支店長さん。3年前に奥さんを亡くしたんだって」

ベッドに横たわりながらも、そう語るお園さんはとても幸せそうだったので、ここは何も言わずに身を引いた方がいいだろうと、それっきり会わず、電話も架けないことにした。

ところが3年後、「雄一さん、ダメになっちゃった」と電話が架かってきた。

「えっ、どうしたの?」

私は反射的に聞き返したが、「別れちゃった」と落ち込んだ様子もなく答えてくれた。

理由は単純。家庭的な振る舞いを求めた相手に合わせられなかったということ。
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