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第1章 人生の絶望

　それは突然の出来事であった。
　有田和義は、父親を喪った。
　横断歩道を渡っている時、前方不注意の車に撥ねられて、頭を強く打ち、そのまま亡くなってしまったのである。
　葬儀中、和義はずっとぼんやりとしていた。
　彼には、母親がいない。幼い頃、死別しており、その後は父親が育ててくれた。だからこそ、両親を喪い、彼は不幸のどん底にいた。
　葬儀を終え、自宅に帰ってくる。父親の生命保険や、慰謝料などがあり、生活自体はやっていける。しかし、広いマンションに一人でいると、なんというか、頭がおかしくなりそうであった。
（食事……、どうしようかな）
　食欲はない。ただ、ここ数日、通夜やら葬儀などがあった関係上、あまり食べていなかった。腹は空いているのだが、やる気が出ずに、食べずにいた。
　自室に引き下がり、ベッドの上に横になる。
　どんよりとした気分の中、彼は微睡み始めた。
　しばらくすると、インターフォンが鳴った。
（誰だろう？）
　時刻を確認すると、夜の七時を回っていた。誰か来るには、少し遅いような気がする。
　和義は立ち上がると、玄関に向かい、トビラを開けた。
　彼の視線の先には、一人の少女が立っている。
　それは、幼馴染の清野由美であった。
　和義と由美は、幼稚園から一緒で、今も同じ高校に通っている。今回、父親が亡くなった関係上、色々と世話になっていた。
「由美か、今回はいろいろありがとう。助かったよ」
　それを聞き、由美は答える。
「ううん。それより、大丈夫？」
「大丈夫だと思うけれど……」
　正直、あまり大丈夫ではない。無理に笑顔を作っている。